個室ばかりで構成された家では、それすらも叶いません。時間帯がズレた生活を送っている家庭では、誰がいつ帰宅したのかさえわからなくなっているのではないでしょうか。こう考えてくると、コミュニケーションを円滑なものにするには、家族で共有できる空間を住まいになるべく多く取り入れ、家族を隔てる遮蔽物をなくすだけでも十分であることがおわかりいただけるはずです。例えば、キッチン一つをとっても、料理をつくる人とそれを待っている人とが分断されてしまうような構造では、料理のプロセスが見えない分、ありがたみも半減しがちです。
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もしもこれがオープン型のキッチンであれば、調理中でも互いに関心を寄せ合うことができるし、料理人は手を抜けなくなるでしょう。出来上がりを待つ側としては、一所懸命に腕を振るう姿を見ることで、料理もひと味違ったものに感じられるはずです。たったこれだけの違いで食事が楽しくなり、会話も弾みます。一日、二日ではそれはどの差ではありませんが、一ヵ月、一年という単位で見れば、延べの会話時間は格段に長くなるはずです。では、夫婦や親子が四六時中、顔を突き合わせていたらどうなるでしょうか。精神医学界の研究では、週に三十五時間以上同じ人と顔を突き合わせていると、統合失調症(精神分裂病)の再発率はぐんと高くなると言われており、濃密過ぎる接触はむしろストレスになってしまうのだそうです。人間同士のこうした微妙な距離の取り方は、どちらか一方だけが意識的にやろうとしても、相手があることなのであまりうまくはいきません。